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『雪に願うこと』、観ました。

 『雪に願うこと』、観ました。
経営していた会社を倒産させ、故郷の北海道・帯広に戻った矢崎学。“ばんえい
競馬”の厩舎を運営する兄・威夫のもとで寝起きをするようになった学は、そこで
自分と同じようにお払い箱になる寸前の馬と出会う‥‥。
 ボクシングの試合で「ホームタウンディシジョン(地元びいき)」という
言葉がある。しかし、少なくとも、この作品が今年の東京国際映画祭で4冠を
達成したのは、そういったものではなかった筈。純粋にこの作品の素晴らしさが
評価されての結果だったに違いない。まず、主要キャストは勿論の事、脇役の
一人一人にまでスポットを当てた“丁寧な人間描写”。一方、朝の空気に
突き刺さる白い息を吐き、急な坂道をもがきながら登っていく巨大馬の躍動感。
例えば、同じ競走馬を扱った近年の『シービスケット』と比べてみても
映像における“線の太さ”は明らかだ。実は、これまでオイラはサラブレッドの
細くひ弱な脚を見るたびに、悲しくなってしまうのだが、ここ(この映画)に
登場する馬場(ばんば)の馬に、そんなものは微塵もない。そのゴツゴツした
太い脚に“生命の息吹”が宿り、その力強い足取りが“本来の馬があるべき
姿”を教えてくれる。それは荒々しく、それでいて、この上なく神々しい。
 さて、物語を一言で言えば、人生に挫折して、敗北感を味わう人々の“敗者
復活戦”だ。“人生の再生”への道は辛くけわしく、どこに行けば良いのか
分からない。「過去」という“重たい荷物”を引きずりながら、息を切らして
“人生の斜面”を上っていく…、まるで馬場の馬の姿そのままに。思うに、
人生(の目標)なんて…、いつかの、湖の下に“沈んだ村の橋”と同じだよ。
“人生の浮き沈み”の中で、目の前に現れたり消えたりする。しかし、
そのダウンの時、他人(ひと)は力を貸してくれず、“自分自身の力”で
新しい未来を切り開いていかなければならないんだね。例え、それがどんなに
惨めで、どんなに格好悪かったとしても…。そして、きっと多分、その時初めて、
周りの人は貴方を認め、貴方を優しく迎え入れてくれる。「雪に願うこと」…、
そのタイトルの意味が分かるのは、やっとラストシーンになってから。彼らは
それぞれの道を選び、再びそれぞれの人生に進んでいく…、互いの健闘を誓った、
その“願い”を胸に秘めながら。

肯定的映画評論室(本店) http://homepage2.nifty.com/aff~movies/

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